きみは硝子のゼラニウム




――もしかしたら、いつか。


誰かが、本当の私を見つけてくれるかもしれない、なんて。

どうして、そんなこと思ったの。


どうして私、尋くんに気持ちを伝えたいなんて思えたの……?



「…はぁっ、はぁっ…っ、」



荒い息が喉の奥で引っかかる。胸が苦しくて、何度吸っても空気が足りない。


やっと視界の先に店が見えて、私はその場で立ち止まった。

俯いたまま膝に手をついて、必死に呼吸を整える。落ち着いて、お願いだから落ち着いて。そう心の中で何度も繰り返しながら、額から流れる汗を手の甲で拭った。


それから、ゆっくり顔を上げる。


――その瞬間。


ドクン、と心臓が嫌な音を立てた。

店の前に、見慣れた姿があったから。



……尋くん。


店長と向かい合って立ちながら、楽しそうに笑っている。

何か他愛もない話をしているみたいで、二人の笑い声がここまでかすかに聞こえてきた。

その声を聞いた瞬間、胸の奥がぎゅっと締めつけられる。



< 215 / 301 >

この作品をシェア

pagetop