きみは硝子のゼラニウム
彼は軽く、いーえ、と言って、ふと私の鞄に目をやる。
「もしかして、バイト中?エプロン」
「あ、はい」
彼は、ふーん、と小さく言ったあと、クスッと笑う。
「俺もついてく。店まで送るわ」
「……えっ!?」
いやいや、なんで?
「放っといたらそこら辺で轢かれそうだし。俺暇だから」
「さっ、さすがに轢かれませんよっ!」
思わず半泣きで叫ぶと、彼はははっと笑い、今轢かれそうだったやつが何言ってんだよって、お腹を抱えて笑う。
あの日とは、また違った彼だった。
ブレザーの制服じゃなくて、今日はロングTシャツに黒のデニム。
前髪もこの前は目にかかっていたのに、今日はさっぱりと上げられている。
でも、あの日のミモザの香りと、彼に降り注ぐ星は変わらない。