きみは硝子のゼラニウム
「デイジーって、雛菊ですよね。俺、この花好きなんです」
「…ふふ。愛ね~」
尋くんと店長の声が聞こえる。
そっと裏口の隙間から覗くと、入荷したばかりのデイジーを手に取っている尋くんの姿が見えた。白くて小さな花びらが揺れている。
そんな何気ない光景なのに、胸が痛いくらい愛おしくて、涙がまた溢れてくる。
こんなにも、好き、だと思う人はこれから先きっともういない。
そう言い切れるくらい、私は尋くんのことが好きだった。
初めて、私の名前を呼ばれたときのことを覚えている。「雛菊」って、あの優しい声で呼ばれた瞬間、胸の奥に花が咲いたみたいだった。
尋くんの周りには、いつも星が降っているみたいだった。きらきらしていて、眩しくて、でも優しくて。瞬きしても消えなかった。
太陽みたいにあったかくて、そばにいるだけで胸の奥までぽかぽかする。ふわっと爽やかな、ミモザの花みたいな香りがする。
大好きで、大好きで、
初めて、大事にしたいって思った人だった。