きみは硝子のゼラニウム




…だめだ。こんなふうに頭の中でぐるぐる考えてたら、余計におかしくなる。

落ち着け、俺。


自分に言い聞かせるみたいに小さく息を吐いて、部屋を出た。


ドアノブの冷たさがやけに現実的で、少しだけ意識が引き戻される。廊下を抜けてリビングへ向かう足取りは、どこか頼りなくて、でも止まるわけにもいかなかった。


キッチンに立って、透明のコップを手に取る。蛇口をひねると、水が勢いよく流れ出して、その音がやけに大きく感じた。


静まり返った家の中に、水音だけが響く。コップに水を灌いで、すぐに口をつける。冷たいはずなのに、それすらよくわからないまま、一気に飲み干してしまった。


喉が焼けるみたいに乾いていたことに、そのとき初めて気づく。

はあ、と大きく息を吐いて、もう一度、ゆっくりと深呼吸をする。吸って、吐いて、吸って、吐いて。



そこでようやく、ちゃんと考えられる気がして、俺は自分の中の言葉を探す。



違うな、と思う。


…違う。



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