きみは硝子のゼラニウム
玄関にたどり着いて、鍵を開ける。
靴もろくに整えず、そのまま外へ飛び出した。
寝間着のまま、夜の空気に触れる。
ひやりとした冷たさが肌に刺さって、一瞬だけ正気に戻る。
「……っは、」
息が白くこぼれる。
そこでようやく、足が止まった。
…待て。落ち着け。何してんだよ。
こんな時間に、いきなり会いに行ったところで、ひなが困るに決まってる。むしろ、迷惑だろ。
考えればわかることなのに。
「……ふーっ」
大きく息を吐いて、前髪をぐしゃっとかきあげる。
冷たい風が、火照った頭を少しずつ冷やしていく。
別に、このままでよかったんだ。
無理に何かを変えなくても、そばにいられるなら、それだけで十分だったはずなのに。
そりゃ、両想いになれたらそれが一番よかったに決まってる。でも、そんなのは後回しでよかったんだ。
ただ、ひなの隣にいられるだけで、それだけでよかったんだよ、俺は。
はあ、と深く息を吐くと、白い息が夜の空気に溶けていく。こんなに寒いのに、ちゃんとあったかくしてんのかな、とか、どうでもいいことばっかり頭に浮かんでくる。
もう関係ないはずなのに、考えるなって言われても無理だろ、こんなの。