きみは硝子のゼラニウム

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放課後。いつもとは違う道を歩く。


結局、昨日の夜は何も返信しないまま終わってしまった。画面を開いては閉じて、言葉を打っては消して、その繰り返しで時間だけが過ぎていった。


もう遅い時間だった、っていうのもあるけど、たぶんそれだけじゃない。文字じゃ、ちゃんと伝わらない気がしたから。



両手をポケットに入れたまま歩いていると、見慣れない制服が視界に入る。でもよく見れば、学ランとセーラー服の中に、自分と同じブレザーの人も混じっていて、特別おかしいわけじゃなかった。


駅までの道の途中にある、ひなの通っている高校。

ちゃんと話さないと、きっとこのままじゃ何も終わらない気がした。ちゃんと顔を見て、声を聞いて、それで伝えたかった。



校門の前で立ち止まって、そのまま背中を預ける。冷たい感触に、思わず肩がすくむ。ポケットの中の手は少しかじかんでいて、ぎゅっと握ってみても、なかなか温もりは戻ってこない。



はあ、と息を吐くと、白く空気に溶けていく。それをぼんやり眺めながら、ふと視線を道路の向こうに移すと、細い道が目に入った。人気の少ない路地裏。



……思い出す。ひなと出会ったときのこと。



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