きみは硝子のゼラニウム




電車に揺られて、着いた先はひなのバイト先の最寄り駅。

改札を抜けて再び走り出す。

冷たい空気が喉を刺すように感じて、思わず「…っはっ…はっ…」と荒い息をつく。


何度も通った、緩やかな下り坂なのに、今日はやけに長く感じた。

店の外のランプが明るく光っているのを確認して、やっと少しずつ速度を落とす。胸の奥で、少し緊張が高まるのを感じた。


昨日からずっと、何を話せばいいのか、何を伝えればいいのか、頭の中で考え続けていた。

でも、もう考えるだけじゃダメだ。会わなきゃ。顔を見なきゃ。声を聞かなきゃ。


呼吸を整えて、ドアノブに手を伸ばす。握った手に、知らず力が入っているのを感じた。


ゆっくりとドアを押し開けると、カランカラン、と小さなベルが鳴る。


奥のほうから足音が近づいてくるのが聞こえて、ドクドクと心臓が鳴り始めた。

走ったせいかもしれない。けれど、胸の奥では、確かに緊張が弾けるように高まっていた。



「あら、尋くん」



奥から出てきたのは店長だった。思わず言葉が止まる。



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