きみは硝子のゼラニウム




顔を見合わせる間もなく、口を開こうとしたけれど、言葉がうまく出てこない。



「店長、ひなって――」


「今日、休みなの」



店長は頬に手を当てて、ごめんね、と優しく笑った。

その笑顔は柔らかく、温かい。でもどこか、胸の奥に刺さるような切なさも含んでいて、思わず肩の力が抜けた。

会えないどころか、避けられている。もう、ほんとに会わないつもりなのか。


ひながいるかどうかだけの確認をして帰るのは、やっぱり申し訳なかった。だから、なんとなく店内を見回す。色とりどりの花々が、静かに香りを漂わせている。落ち着く匂いに包まれながら、少しだけ気持ちが和らぐ。


どれも手入れの行き届いた花で、ひなのことを思い浮かべると、不思議と胸がきゅっとなる。



「…尋くん。ひなちゃん、バイト辞めるの聞いた?」



その言葉に、少し言葉を詰まらせる。どう答えればいいのか迷って、店長の顔を見る。そこには、ほんの少し哀しげな瞳があった。

思わず口を強く結んで、短く答えるしかなかった。



「…聞きました」



店長は、そう、と小さく呟いた。



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