きみは硝子のゼラニウム
テーブルに置いてある花束を抱えながら、胸の奥で心臓がうるさく鳴っているのを感じる。
さっき彼に会ってから、目が奪われすぎて、自分が自分じゃないみたいに恥ずかしい――そんなことを考えながら、店長のもとへ向かう。
「その花束、尋くんに渡してくれる?」
「…ヒロくん?」
パソコンをのぞき込むと、店頭受け取りの欄に“羽吹尋”の文字。
あぁ、羽吹さんって、毎月花束を注文してくれる常連の…
「あれ?羽吹さんって、桜紀さんじゃなかったですか?」
確か40代くらいの、綺麗な女性だったはず。
じゃあ、羽吹尋って…?
「え?ひなちゃん、知ってて一緒に来たのかと思ったんだけど、知らなかったの?」
「え?」
店長は笑いながら説明する。
「彼、桜紀さんの息子さんの尋くんよ」
指さされて、私は驚いて視線を上げる。
さっきまで私と一緒にいて、今日も助けてくれた、あの星が降るミモザの香りの彼――その彼が、羽吹尋だった。