きみは硝子のゼラニウム
彼は立ち上がり、背筋を伸ばして丁寧に挨拶する。
「店長。いつも母さんがお世話になってます」
頭がパンクしそうで、口をぽかんと開けたままの私を見て、彼は思わず吹き出した。
「何が起こってるかわかんないって顔してる」
「尋くん、うちのひなちゃん、いじめないでくれるー?」
ははは、とふたりの笑い声が店内に響く中、私は混乱して立ち尽くす。
なんで?どうして?まって、どういうこと?
理解が追いつかない。
そんな私をよそに、彼はさっと私の持っていた花束を受け取り、にっこり笑った。
「ありがと。母さん、喜ぶと思う」
聞けば、桜紀さんの誕生日が近くて、お父さんに受け取りを頼まれたのだという。
「…そっか。だから、場所も分かってたんだ…」
妙に納得する自分がいた。
私にお店の名前を聞かなくても鞄を見て分かったこと、地図を見なくても場所がわかったこと。