きみは硝子のゼラニウム
「ひなちゃん、いつでも帰ってきていいんだからね」
そう言った店長の声は少し震えていて、その目には同じように涙が溜まっていた。
その一言に、胸の奥に押し込めていた感情が一気に溢れそうになって、ぐっと唇を噛みしめる。
「……はい」
やっとの思いで絞り出したその返事は、ちゃんと笑えていたのか自信がなかったけれど、それでも精一杯の気持ちを込めたつもりだった。
店長のつくる花束が好きで、ここに来るたびにその優しさに触れて、何度も救われてきた。
癒しをくれる花が好きで、その一輪一輪に込められた想いを知るたびに、少しだけ自分も優しくなれた気がした。
そしてなにより、この店に広がる香りが好きだった。
扉を開けた瞬間にふわっと包み込んでくれるその香りは、いつも私にあたたかい気持ちを思い出させてくれて、どんな日でもここに来れば大丈夫だと思わせてくれる、大切な居場所そのものだった。