きみは硝子のゼラニウム




そのときの声はいつもより少し柔らかくて、どこか誇らしげで、花の話をしているときのお母さんは、本当に楽しそうだった。

その横顔を見るのが好きで、もっと知りたいって思って、気づけば何度も同じ質問をしていた気がする。


お母さんのことをもっと知りたくて、同じものを好きになりたくて、私はおねだりして花の図鑑を買ってもらった。


難しい名前や特徴を一つひとつ覚えていくのが楽しくて、ページをめくるたびに、お母さんとの距離が少しずつ近づいていくような気がしていた。


あの時間は、確かに私の中で大切な宝物になっている。



でも――そんな記憶に触れるたびに、胸の奥にひっかかるものがあるのも事実だった。


もう、ここにいる資格なんてないんじゃないか、そんな考えがふいに頭をよぎる。


どうにかしてお母さんとの繋がりを消したくなくて、この店で働かせてもらっていたけれど、本当はずっとわかっていた。



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