きみは硝子のゼラニウム
私はきっと、自分でも気づかないところで、たくさん尋くんに助けられてきた。
出会った時から、ずっと、何も言わなくてもそばにいてくれて、どうしようもなく沈んでしまうときも、何もなかったみたいに隣にいてくれた。
尋くんは、私の全部を受け止めてくれていた。
弱いところも、醜いところも、全部知った上で、それでも離れないでいてくれた人だった。
そんな人を、私は――自分の意志で手放した。
初めて、自分で大切にしたいと思えた人だったのに。それなのに、結局、自分から離れてしまった。
無機質なリビングに、その赤いバラがあるだけで、それだけで私は、あの頃に引き戻されてしまう。
笑っていた時間も、何気ない会話も、全部が鮮明によみがえってきて、息が詰まりそうになる。
「…っ、」
静まり返った部屋の中で、ひとりきり、私は崩れるみたいにその場にしゃがみ込んだ。
手にしていた花束が、するりと腕からこぼれ落ちて、床に散らばる。その色鮮やかさが、やけに残酷に見えて、視界が滲んでいく。
雪はまだ降り続いているのだろうか。
そんなことさえ、もうどうでもよくなってしまうくらい、胸の奥がぐちゃぐちゃで、ただ苦しくて、どうしようもなかった。