きみは硝子のゼラニウム
「あのさ…」
彼が何かを言いかけたそのとき、プルルルとお店の電話が鳴る。
店長は、はいはい、と言いながら奥に行ってしまった。
さっき何か言おうとしていた彼をじっと見つめると、彼は何事もなかったかのように、花束を抱えながら店内を回る。
ふと、バラの花瓶の前で立ち止まり、口を開いた。
「…バラの花言葉って、なに?」
「バラは、本数で意味が変わるんです」
そう言いながら、私も彼の隣へ歩み寄る。
「じゃあ、一本は?」
彼が尋ねるので、私は記憶を掘り返して答える。
「…一目惚れ、ですかね」
隣に並ぶ彼を見ながらそう言うと、彼は、ふーん、と、興味があるのかないのか分からないような声を漏らす。
「じゃあ、一本くれない?」
なんで?と一瞬思うけれど、仕事中なので言われた通りに一本包もうとカウンターに持っていこうとすると、その瞬間、彼の手が私に触れた。