きみは硝子のゼラニウム




「……な、んで?」



声が、かすれて漏れる。


なんで、ここに。なんで今、目の前に。

頭の中が真っ白になって、うまく考えが追いつかない。



ほ、ほんもの……?いや、でも、こんな都合よく現れるなんておかしい。もしかして、幻聴と幻覚がセットで来てるとか……?


そう思おうとするのに、そう思ってしまったほうが楽なのに、目の前の尋くんは確かにこちらを見ていて、ゆっくりと私のほうへ歩いてくる。



「ひな。会いに来たよ」



その言葉が、まっすぐ胸に届いた瞬間、心臓がぎゅっと掴まれたみたいに苦しくなった。



「……っ!」



何も返せないまま、ただ立ち尽くすしかない私の前で、尋くんはふわっと笑う。


その笑顔は、太陽みたいにあたたかくて、優しくて、ずるいくらい変わっていなくて。


目の前に、星がキラキラと降り注いだみたいに、世界が一瞬だけ明るくなる。


ふわりと風に乗って届いたのは、どこか懐かしい、爽やかなミモザの香りで、その瞬間、抑えていたはずの感情が一気に溢れ出しそうになる。



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