きみは硝子のゼラニウム




「……っ、あ……」



どうしよう。なんで。どうして、こんなタイミングで。こんなふうに、また目の前に現れるの。


頭の中はぐちゃぐちゃで、言いたいことなんて何一つまとまらないのに、涙だけが勝手に溢れてきて止まらない。



「はは、泣いてる」



少し困ったみたいに、それでもどこか嬉しそうに笑う声がして、余計に涙が止まらなくなる。



「だ……だ、って」



言葉がうまく出てこなくて、喉の奥で引っかかる。


だって、だって。

なんでここにいるの?どうして、会いに来るの?私、あんなに酷い別れ方したのに。突き放して、傷つけて、自分から離れたくせに。


それなのに、どうしてそんな顔で笑うの。どうして、何もなかったみたいに私の名前を呼ぶの。


胸の奥に溜め込んでいた後悔も、寂しさも、全部見透かされているみたいで、逃げ出したくなるのに、足は一歩も動かない。


ただ、目の前にいる尋くんから目を逸らせなくて、ぼろぼろと涙を零しながら、ぐちゃぐちゃのまま立ち尽くすことしかできなかった。



< 268 / 301 >

この作品をシェア

pagetop