きみは硝子のゼラニウム




「デイジーの花言葉、知ってるよな?」



不意にそんなことを言われて、思わず間の抜けた声が漏れる。



「……へ?」



頭がついていかなくて、涙でぐしゃぐしゃのまま瞬きを繰り返す私に、尋くんはニッといつもの調子で笑った。

そのまま、ずっと背中に隠していたものを、ゆっくりと私の目の前へ広げる。


視界いっぱいに飛び込んできたのは、色とりどりの――花束、だった。



「ピンクは希望。白は無邪気。紫は元気。赤は幸福。黄色はありのまま」



ひとつひとつ確かめるみたいに、静かに紡がれる言葉。

そこにあるのは、いろんな色のデイジー。希望、無邪気、元気、幸福、ありのまま――その全部が、胸の奥にゆっくりと染み込んでくる。


可愛くラッピングされたそれに、見覚えがあった。――Petal & Co.



「俺は、正直、花言葉とか名前の由来とかどーでもいいんだよ。でも、ひなはそうじゃないだろ」


「……っ、」



私の“雛菊”っていう名前。どうして嫌いなのか、どこまで知ってるんだろう。きっと、誰かから聞いたのかもしれない。



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