きみは硝子のゼラニウム




小さい頃、名前をからかわれて、笑われて、それがずっと心に引っかかって、大好きだったはずの名前を、いつの間にか隠すようになっていたこと。


名前を呼ばれるたびに、少しだけ苦しくなっていたこと。


そんな私を、尋くんはどう思うんだろう。


今はもういないお母さんが、願いを込めてつけてくれたこの名前。

その名前に込められたデイジーの花言葉みたいにはなれない自分を、見てどう思うんだろう。



……私、ずっと囚われてた。

名前に。お花に。意味に。理想に。


そうでいなきゃいけないって、勝手に自分を縛りつけて、勝手に苦しくなって。逃げるみたいに、見ないふりをしてきた。



でも、それでも、本当は――。



尋くんの言う通り、私はきっと、ずっと本当は。


この名前を、大事にしたかった。大好きなお母さんがくれた、大好きなこの名前を、ちゃんと好きだって言いたかった。


恥ずかしがらずに、隠さずに、胸を張って、自分のものだって思いたかった。



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