きみは硝子のゼラニウム




「何話したの?」


「……な、ないしょ」


「はは。そのほうがいーよ」



そう言って、尋くんはすっと立ち上がると、「やば、足痺れた」なんて少し困ったみたいに笑う。


私が大切にしたいものを、ちゃんと大切にしようとしてくれる人。

私が目を背けてきたものも、怖くて触れられなかったものも、全部まっすぐに向き合ってくれる人。

そんな尋くんのことが、どうしようもなく好きだと思った。



大事なものを、大事にできないままでいた私の代わりに、尋くんがそっと拾い上げて、大切にしてくれるから。だから私は、気づけば全部を預けたくなってしまう。


こんなふうに誰かに寄りかかるなんて、今までの私なら考えられなかったのに。




夜ご飯は、オムライスにした。

冷蔵庫にあるもので作れるし、ちょっとだけ特別感もあって、なんとなく今の気分にぴったりだったから。

キッチンに立って、卵を割る手が少し震えているのは、きっと緊張のせいだけじゃない。さっきまでの出来事が、まだ夢みたいにふわふわしていて、うまく現実に追いついていないみたいだった。



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