きみは硝子のゼラニウム




「ひっ、尋くん……風邪ひいちゃうよっ」



慌てて声を上げるけど、尋くんは私の言葉なんて気にせず、ぐいっとキッチンまで来て、後ろからぎゅっと抱きしめてくる。その感触に体が固まる。



「……っ、尋くん?」



いつもと違う匂いがする。ほんのり温かくて、私と同じ香り。ミモザの爽やかさは少し消えてしまったけど、これはこれで、どうしようもなくドキドキする。



「……尋くん、あのっ」



言葉を絞り出そうとすると、尋くんが首を傾げて、低い声で「んー……もうちょっと」と言う。


な、なにこれ……!?どういう状況!?私たち、まだ付き合ってないよね!?


頭の中がぐるぐると回って、思考が追いつかない。



「腹減った」



――尋くんの一言に、はっと我に返る。



「……は、早く髪乾かしてきて?」



顔を上げて後ろを振り向くと、尋くんはにやりと笑って、「すぐ戻ってくるから」と言って行ってしまった。


……もしかして、また私が寂しがってると思ってるのかな。



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