きみは硝子のゼラニウム




「……今日は、そうじゃないんだけどなぁ~……」



力が抜けて、へなへなとシンクの前でしゃがみ込み、小さく丸まる。広いお家にひとりでいることが寂しくないわけじゃない。

でも、今日はただただ、まだ一緒にいたかった。

尋くんのことが、好きだから離れたくなかったわけで。

早く、想いを伝えたかったから、で。



結局、「好き」って、どうやったら伝えられるんだろう。

胸の奥でじわじわと熱を帯びるこの気持ちを、言葉にすれば伝わるのか、それとも全部空回りしてしまうのか、全然想像がつかない。

友達もいない私にとって、恋愛なんて雲の上の世界だったから、実際に自分が恋をすると、どうしていいのかまるでわからなくなる。


こんなことなら、もうちょっと恋愛ドラマとか少女漫画を読んで勉強しておけばよかった……と、ひとりうなだれて肩を落とす。


頭の中で「どうやって言おう、どうやって伝えよう」とぐるぐる考えているうちに、また胸がぎゅっと苦しくなる。



――そんなとき。

ガチャッと、リビングの扉が開く音がして、咄嗟に体が反応して立ち上がる。



「ドライヤーありがと」


「う、うんっ」



あぁ、もうっ……落ち着け、私!



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