きみは硝子のゼラニウム




「この前、駅で逃がしたとき、心底後悔した」


「…っ、」


「綺麗だと思ったし、目が離せないっていうか…ずっと見ていたい感じ」



彼はそう言って、少し照れたように笑いながら、また来るから、とりあえず今日は受け取って、と右手を差し出す。


私は何が起こっているのか分からないまま、その手にそっと出した右手に、一本のバラが添えられた。



「じゃあ、ケガすんなよ」



少しからかうようにそう言って、彼は大切そうに花束を抱えて去っていく。


背中しか見えないのに、心臓はドックドック鳴りっぱなしで、顔が赤くなっているのが自分でも分かる。


背中しか見えない、じゃない。

この前も、今日だって、彼は私を引っ張って連れ出してくれる。



固まったまま立っていると、電話を終えた店長が戻ってきて、あら、尋くん帰ったの?と声をかける。



「は、はい」



上の空で返事をする私の顔を見て、店長は手に持っているバラをちらりと見ながら、にっこり笑って言った。



「綺麗ね」














” 一輪のバラ ”

― 一目惚れ





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