きみは硝子のゼラニウム

コチョウラン


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日曜日。


カーテンの隙間から差し込むやわらかい光に起こされて、私はいつもより少しだけ丁寧にメイクをした。

これからバイトだというのに、胸の奥がふわふわして落ち着かない。



リビングに降りると、テーブルの真ん中、透明な花瓶の中で凛と立っている一本の赤いバラが目に入る。

昨日、羽吹さんにもらった、あのバラ。

持ち帰ってきてすぐに水を替えて、何度も角度を変えて眺めて、まるで宝物みたいに扱った。


うれしかった。
すごく、すごく、うれしかった。


花なんて、誰かにもらったことなかったから。

自分で買うしかなくて、たまに店長に状態の悪いものは持ち帰っていいよって言われたりはするけれど。


あんな、現実味がなくて、まるでおとぎ話みたい、な。

思い出すだけで、頬が熱くなる。


自分の口角が、無意識のうちにゆるんでいることに気づいて、慌てて引き締めようとするけど、うまくいかない。



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