きみは硝子のゼラニウム
「…しょうがないじゃん」
誰に言うでもなく小さく呟いて、私はイーっと両頬を指で引っ張った。
鏡もないのに変な顔をして、高ぶる気持ちごと全部どこかへ飛んでいけって願うみたいに。
こんなの浮かれすぎだよって、自分で自分にブレーキをかける。
でも、いくら頬を引っ張っても、無理やり口角を下げても、昨日の記憶までは消えてくれない。
むしろ触れれば触れるほど鮮明になって、あの瞬間の空気も、声も、視線も、何度でも胸の奥で再生される。
口元はなんとか真顔に戻せても、心臓の音だけは正直で、どくん、どくんって落ち着く気配がない。
ずっと、枯れないでいてくれたらいいのに、なんて本気で思う。
花のことなのか、この気持ちのことなのか、自分でもわからないまま。