きみは硝子のゼラニウム
しんと静まり返った、私しかいない日曜日の広いリビング。
時計の針の音さえやけに大きく響く空間で、テーブルの上のバラの赤だけが、鮮やかに色を放っている。
消えないでほしい。枯れないでほしい。
だって昨日、ほんとうに一瞬、ほんとうに一瞬だけ、
王子様なんじゃないかって思っちゃったの。
物語の中みたいに、私を迎えに来てくれたんじゃないかって、本気で思ってしまった。
そんなわけないって頭ではわかってるのに、あの差し出された一輪で、私の世界は簡単に塗り替えられてしまった。
じっとバラを見つめていると、触れてもいないのに花びらがはらりと落ちてしまいそうな気がして、慌てて視線を逸らす。
見つめすぎたら壊れてしまいそうで、期待しすぎたら罰が当たりそうで、それでも目を離すのが惜しくて。
私はそっと息を吐き出して、まだここにある赤を、もう一度だけ確かめるみたいに胸に焼きつけた。