きみは硝子のゼラニウム
暖かい春の日差しの中、配達先までの道を歩きながら、胸の奥がふわふわしていることに気づく。
風がやさしくて、空が高くて、道端の草花まできらきらして見える。
でもそれは、歩いている人たちがどうとか、景色がどうとか、そういうことじゃなくて。
私の、心の中、の話で。
昨日からずっと、少しだけ照れくさいような、あったかいような、くすぐったい気持ちを抱えたままなのだ。
何度も、何度も思い出してしまう。
朝起きてから、もう何回目だろう。
頭の中で、あの声が再生される。
『綺麗だと思ったし、目が離せないっていうか…ずっと見ていたい感じ』
不意打ちだったのに、冗談じゃないってわかるくらい真剣な声だった。
あの、真っすぐな目。逸らせなかったのは、たぶん私のほう。
心臓がうるさくて、どうしていいかわからなくて、それでも嬉しくて。
花よりもずっと、私のほうが赤くなってた気がする。
配達用の花束を抱えながら、私はそっと頬に触れる。
まだ少し、熱い気がした。
春のせいにしてしまえたらいいのに。