きみは硝子のゼラニウム




信号で立ち止まったとき、ふと視線の先に入ったのは、横断歩道の向こう側にいる親子の姿だった。

お母さんと、小学生くらいの女の子。

ぎゅっと手を繋いで、顔を見合わせながら楽しそうにお喋りしている。

女の子が、どこからか舞ってきた桜の花びらを見つけて「あ、見て!」って指さして笑う。

その横顔がきらきらしていて、春の日差しをそのまま閉じ込めたみたいで。



……私も、あんな感じだったのかな。


そう思った瞬間、胸の奥がぎゅっと痛くなった。


微笑ましいな、いいな、って。それだけで終われたらよかったのに。



どうしても、どうしても。



私が——



「なにしてんの?」



……え? 

耳元に、低くて柔らかい声が落ちてきた。



「……!?」



心臓が跳ねる。

びくっと肩が揺れて、思わず息を飲んだ。



< 35 / 301 >

この作品をシェア

pagetop