きみは硝子のゼラニウム




あ…私の名前。

そうだ、確かにちゃんと名乗ってなかった気がする。



「あー…名前」


「え?言いにくい?」



首を少し傾げて覗き込まれて、余計に喉が詰まる。


言いにくい、とかじゃ、ないけど。


ただ、怖いだけ。なんとなくぎゅっと手に力が入ってしまう。


カフェラテのカップが小さく音を立てた。


チラ、と隣に視線を移せば、尋くんは私の握った手をじっと見ていて、はっとして慌てて力を抜く。



名前、くらいでっ。

たったそれだけなのに、どうしてこんなに緊張してるの、私。

尋くんに変に思われたくないっ…。でも、でも…。


名前を教えて、変って思われたらどうしよう。


似合わない、とか、変な名前だとか、思われたらどうしよう。


じわっと冷や汗が背中をつたっている感触がして気持ち悪い。


たぶん、すでに、尋くんには変な奴だと思われてる。

名乗るだけなのにこんなにしぶるのおかしいって、絶対思ってる。



< 54 / 301 >

この作品をシェア

pagetop