きみは硝子のゼラニウム




尋くんは一瞬だけ目を丸くして、それから、ふっと柔らかく笑った。



「雛菊って呼んだらダメなの?綺麗な名前なのに」


「……。」



あぁ、もう。ほんとに、この人は。さらっと、そんなことを言う。


きれいなんて、そんなの、ほんとは私が一番わかってる。

一番、私がわかってるのに。

なのに、尋くんは迷いなく“綺麗”と言う。


じわっと胸の奥にいろんなものが込み上げてくる。

嬉しいのか、苦しいのか、分からない感情が混ざり合って、視界が少し滲む。

やばい。泣きそう。こんなところで泣いたら、絶対またからかわれるのに。

慌てて下を向くと、尋くんの指先が、そっと私の顎に触れた。びくっと肩が揺れる。



「なに。なんでそんな顔すんの」



低くて、少しだけ焦った声。さっきまでの余裕が、ほんの少しだけ消えている。



「……っ、なんでも、ないです」



必死に瞬きをして、こみ上げてくるものを押し戻す。



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