【完】きみは硝子のゼラニウム




尋くんが今どんな顔してるのか、背中しか見えなくてわからない。

胸がぎゅうっと締めつけられて、息が浅くなる。


気づけば、私は無意識に尋くんの制服の背中をぎゅっと掴んでいた。


ほんとに、ずるい人。
私がこういう経験ないって、絶対わかってるくせに。慣れてないって知っててやってるんだ。


きっと、からかわれてるだけ。そう思わなきゃ、期待しちゃうから。惑わされちゃだめ。浮かれちゃだめ。


自分に何度も言い聞かせるのに、ぎゅっと握りしめた尋くんのシャツから、どうしても手を離せない。



「それより、超探したのにどこにもいねーし、どこ行ってたわけ?」


「お前らみたいなやつに捕まりたくないから隠れてたんだよ」


「ひっど!」



ケラケラと笑う声が聞こえてくるのに、私はもう全然それどころじゃない。心臓がうるさすぎて、耳の奥で自分の鼓動しか聞こえない。



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