【完】きみは硝子のゼラニウム
「そーゆーの無理だって。しかも今、俺ひとりじゃないから」
「この子なら、俺たちが見てるからさ。じゃないと、俺らじゃ手に負えねーって。俺らにも休憩時間くれよなー」
あ……やばい。
尋くん、行っちゃう…?
そう思った瞬間、無意識に手に力が入る。
すると、すぐに——ぎゅっ。
尋くんの手が、同じ強さで握り返してきた。
私にとっては、この手が、今はいちばんで。
「ね、ちょっと尋かりていい?」
尋くんの背中の横から、ひょこっと顔をのぞかせてそう言うその人。
「え、っと…」
だ、だめって、言いたい。言ってしまいたい。今この手を、離したくないって、ちゃんと口に出せたらどれだけ楽だろう。
そっと顔を上げると、尋くんが少しだけ振り向いて、私を見ていた。
なに、その顔…。何考えてるの。
もしここで「だめ」って言ったら——尋くんは、きっと私の隣に残ってくれる。そんな気がする。
じゃあ、私が「いいよ」って言ったら?そのまま、私を置いて行っちゃうの?
頭の中でぐるぐると最悪の想像が広がる。
でも、ここで引き止めたら、それはわがままなんじゃないかって思ってしまう。
勘違いしたくない。迷惑もかけたくない。