【完】きみは硝子のゼラニウム
「…い、いいですよ。私、ひとりで待てますので、3人で行ってきてください」
そう言って、自分からそっと手を離した。離れた瞬間、指先が急に冷える。
できるだけ、自然に。できるだけ、明るく。口角を上げる。
大丈夫。今度こそ、ちゃんと笑えてるはず。
「えー!優しい!尋にはもったいないと思う!」
「いやいや、尋くんとはそういうのじゃないですし…はは」
自分で言って、少しだけ胸が痛む。
“そういうのじゃない”。自分で線を引いたくせに、どうしてこんなに苦しいんだろう。
「じゃー、尋借りてくね」
どうぞ、なんてまた笑ってみせる。
その瞬間、じっと私を見る視線とぶつかった。尋くんの目。
「まじで言ってんの?」
「…なにがですか?」
とぼけるみたいに返して、ほんとですけど、と続けた私に、尋くんは小さくため息をついた。
その音が、思ったより鋭くて、胸の奥にズキッと刺さる。