きみは硝子のゼラニウム
足元に視線を落とすと、さっきまで履いていたスリッパがバラバラに置かれていた。
さっきまで繋がってた手の温度も、もうない。
……やっぱり、王子様、みたいだった。
…………王子様、みたいだったから。
尋くんは、王子様だから。
私なんかが、隣に立っていい人じゃないんだって、急に現実を突きつけられた気がした。
隣にいるのはだめなんだと思う。似合わない。釣り合わない。勘違いしちゃいけない。
何度も何度も自分に言い聞かせるのに、胸の奥がじわっと熱くなって、視界が滲みそうになる。
だめ。泣くのは違う。
スリッパ……は、返しに行こう。
足元に散らばっていたスリッパを拾い上げ、ぺた、ぺた、と軽い音を立てながら、長い廊下をひとりで歩く。
靴、どこだっけ……。
入口まで戻ってきたものの、自分がどこで靴を脱いだのか思い出せない。
ロッカーの前?それとも掲示板の横?きょろきょろ見回しても、どれも同じに見える。
……私、尋くんしか見てなかったなぁ…。
どこで靴を脱いだかも覚えてないくらい、ずっと、尋くんのことしか見てなかった。
気づいた途端、胸の奥がじわっと崩れるみたいに痛くなった。悲しい。寂しい。どうしようもなく、ひとりだって思い知らされる。