きみは硝子のゼラニウム




視界が滲んで、足元がぼやける。

気づけば、その場にしゃがみ込んでいた。



「…っ、うっ……」



……なんで、“いいですよ”なんて言ったんだろう。


本当は、行ってほしくなかったくせに。本当は、隣にいてほしかったくせに。


私といてって、それだけのことなのに。たったそれだけの言葉が、どうしてこんなに言えないんだろう。


嫌われるのが怖い。重いって思われるのが怖い。だから先に、平気なふりをしてしまう。



行ってきていいよ、なんて、本当はこれっぽっちも思ってなかったくせに。


それなのに口から出たのは、あんな聞き分けのいい言葉で。笑って、平気なふりまでして。




——でも心のどこかで、期待してた。



もし私が「いいよ」って言っても、それでも尋くんが、私の隣を選んでくれたらいいなって。


試すみたいな、ずるい期待。


傲慢で、愚かで、子どもみたい。


自分でもわかってるのに、いつになっても変わらない。



こんな私が、私は大嫌い。



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