きみは硝子のゼラニウム




「あのな、俺のことなんだと思ってんの?」


「お…王子様?」


「どこをどう見てそう思ったわけ?勘弁して」



だって、私にとっては出会った時からずっとそうだった。


路地裏で連れ込まれそうになった私を助けてくれて、手を引っ張ってくれたあの時から、尋くんの周りにはまるで星が降っているみたいに輝いていた。


あったかくて、爽やかで、陽だまりみたいなミモザの匂いがして。



ひな、と私の名前を呼ぶその甘い声に、私は思わず震えてしまう。


また一歩後ろへ下がれば、背中が壁にトンッとぶつかる。


尋くんはポケットに手を突っ込み、ギリギリまで私に近づいてくる。

少し上を向けば、尋くんの顔がすぐそこにあって、見下ろすように口を開いた。



「俺、王子様でもなんでもないよ」


「…っ、」


「言ったと思うけど、ひなにしかこういうことしない」



分かった?と聞かれて、私は反射的に頷く。


ポケットに手を突っ込みながら、私を見下ろす尋くん。少し顔が赤い気がする。

その近さに、私の心臓もどきどきしている。

というか、今日はずっとこんな調子だ。



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