絶対恋度




「(さむ……)」

何だこの茶番劇……。

身を呈してかばう様子を見れば、身体中に滾っていた熱が一瞬で冷め、この世界が、私にとってひと握りの幸福だったはずの生活が、確かに色を失うのがわかった。

せめて、わたしを庇って欲しかった。

人はおそらく、これを絶望と呼ぶ。そして私は今まで生きたきた中で少なからず絶望の大小に触れ、今この瞬間の絶望こそ人生最大のそれだと言える。

家を出る前、いつものように鍵を取ろうとする手を止めた。鍵受けには私の好きなキャラクターがコロンと転がっている。

「さようなら」

スーツケースを片手に夜の世界へ身を投じた。振り返ることはしなかったし、絶対に泣くもんかと、鼻をすすりながら、三年住んだマンションを後にした。



いつも通りのはずだった。

日常はわたしの思い描くかたちをしていて、今日もまたいつものように“いまから帰るね”と、家にいるはずの恋人へメッセージをいれて、仕事で疲れた身体を休めるべく家に帰った。

いつも通りのはずだった。

住み慣れた家の、見慣れたリビングに彼氏と友人が待ち構えていた。
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