君となら地獄を見たい
「こんな時に···、とも思ったんだけど、いつどうなるか分からないからこそ、お前に伝えておきたい事があって。」
火鷹はそう言うと、何だか照れくさそうにコメカミあたりを人差し指でポリポリと掻いた。
「伝えておきたい事?わたしに?何?」
わたしがそう訊くと、火鷹は意を決したような表情で「夏菜。」とわたしの本名を呼んだ。
「俺···、ずっと夏菜が好きだった。あ、いや、過去形じゃなくて、今も······」
思いも寄らぬ火鷹からの告白に、わたしは驚きから息を吸うのも忘れてしまう程だった。
「だから、俺は···何があっても、夏菜の事は守るから。ただ、それだけが言いたくて。」
火鷹はそう言い終えると、何も言わずに固まるわたしの反応から逃げるようにソファーから立ち上がり、「じゃあ、これさんきゅーな。」と腕時計形装置をつけた方の腕を上げ、足早に部屋から出て行ってしまった。
思考が停止するわたしは自室に一人になり、ふと我に返る。
「えっ······、あ!火鷹?!」
慌てて立ち上がるわたしは、急いで火鷹を追い掛けた。
しかし、廊下に出ても既に火鷹の姿はなく、火鷹の部屋に行っても応答は無し。
B10のリビングに行っても火鷹の姿は無かった。
(どこ行っちゃったんだろ······)
きっと火鷹は、勇気を出して想いを伝えに来てくれたはずだ。
普段クールで自分の事をほとんど話す事がない火鷹が···、わたしに自分の気持ちを伝えに来てくれたというのに、わたしは言葉は疎か、何の反応もする事が出来なかった。
わたしは溜め息を零しながら、誰も居ない静かなリビングのソファーに腰を下ろした。
少し前まではその日居るメンバーで集まり、一閃くんが作ってくれた料理を食べる事もあったリビング。
今は、わたし一人にはあまりに広過ぎた。
「なっちゃん、何してんの?」
すると、シャワーを浴び終え、首にタオルを掛けたボスがラフなTシャツ姿で現れた。
「ボス···」
「何だよ、そんな難しい顔しちゃって。」
ボスはそう言うと、わたしの隣に腰を下ろし、「どうした?火鷹と何かあった?」と明るい口調で訊いてきた。
わたしは視線を下げ俯くと、「わたしって···、どうしていつもこうなんでしょうか。」と、つい弱音を吐いてしまった。
「いつもこうって?」
「気が付かないというか、鈍いというか······」
わたしがそう言うと、ボスは「ははっ!」と笑い、「もしかして、火鷹の奴、やっとなっちゃんに気持ち伝えたのか?」と嬉しそうに言い出したのだ。