君となら地獄を見たい
「えっ!ボス、知ってたんですか?!」
「知ってるよ。てゆうか、気付いてなかったの、なっちゃんだけ。」
「えぇ?!」
わたし以外のメンバーが知っていたという事実に困惑しながらも、何だか恥ずかしくなっていく。
するとボスは、ソファーの背にもたれ掛かりながら「でも、良かった。あいつ、自分の口から言えたんだなぁ。」と穏やかな表情で宙を見上げていた。
「今のボス、父の顔してますね。」
「そうかぁ?まぁ、でも···父親としては本当に嬉しいよ。火鷹には、俺が勝手に決めたこんな危ないレールの上を歩かせてきて、申し訳ないと思ってたから。」
ボスはそう言って、切ない表情を浮かべた。
「こんな世界だから、あいつは愛を知らずに生きていく事になってしまうと思ってた。でも、なっちゃんと出逢って···、あいつは初めての感情に出会えたんだな。」
そう言って、ボスはわたしの方を向くと、優しく微笑み「なっちゃん、ありがとう。」と言った。
「い、いえ···わたしは、何も······」
「男はなぁ、大切な女がいると、頑張れるもんなんだよ!」
「へぇ〜。じゃあ、ボスもそうだったんですか?」
何気無くわたしがそう訊いてみると、ボスはハッとした表情を浮かべ、それから「んー、まぁ、そうだな。」と表情を綻ばせた。
「それに、俺からもなっちゃんには伝えておきたい話があるんだ。」
「えっ?」
「でも、今はまだその時じゃない。時期がきたら、ちゃんと話すよ。」
「···わかりました。」
するとボスはソファーから立ち上がり、腕を上にあげ、身体を伸ばすと「さぁて、寝れる時に寝とかないとな。」と言った。
「なっちゃんもちゃんと寝とけよ。疲れた顔してるぞ。」
「それ、火鷹にも言われました。」
「ははっ!あいつもよく見てんなぁ。なっちゃんを心配してるって事だよ。」
ボスはそう言いながら軽快に歩き出し、自室へと向かおうとした。
「じゃあ、なっちゃん。おやすみ!また明日な!」
「はい、おやすみなさい。」
ボスはニカッと笑顔を見せると、手を振りながら自室の方へ歩いて行った。
(確かに寝れる時に寝ておかないとなぁ。)
そう思いながらもわたしは火鷹が気になり、壁に埋め込まれている大きなデジタル時計に目をやった。
現在の時刻は"23:58"。
もうすぐ日付が変わる。
(火鷹······)
わたしはさっきの火鷹のあの顔が忘れられず、自室に戻ってもなかなか寝付く事が出来なかった。