君となら地獄を見たい
それから20分程経っただろうか。
手当ての準備を終え、わたしが裏口前で待機をしていると、大樹さんも駆け付けてくれた。
「大樹さん。」
「もうすぐ一閃が到着する。俺が医務室まで運ぶよ。」
「え、でも火鷹が付き添ってるはずじゃ、」
そう話していると、裏口の分厚い鉄扉が開いた。
その扉からは、胸元に血を滲ませふらつきながら、一閃くんが一人で歩いて来た。
「一閃くん!」
わたしが傷を負う一閃くんに駆け寄ると、それよりも先に大樹さんは一閃くんを抱きかかえた。
しかし、一閃くんに付き添って来ると思っていた火鷹の姿は無く、一閃くんは痛みに表情を歪ませながら「すいません。大樹さん、射生さん···っ······」と言った。
「喋るな。出血が酷くなる。」
「謝らなくていいから、とにかく医務室に急ごう。」
そしてわたしは大樹さんと共に急いで医務室に一閃くんを運んだ。
一閃くんは胸にスナイパーで撃たれたような傷を負っていたが、弾は貫通しており、体内に弾は残っていなかった。
わたしが調合した止血剤を使用し、胸に包帯を巻いて出血を止める。
幸い、心臓や動脈は避けられており、命に別状はなさそうだ。
「射生さん、ありがとうございます。」
止血剤と痛み止めが効いてきたのか、一閃くんの冷や汗は止まり、表情も落ち着いてきた。
わたしは「命に別状がなくて良かったよ。」と言うと、一閃くんに栄養剤が含まれているドリンクを飲ませてあげた。
「そういえば、火鷹はどうしたの?一閃くんの救出に向かったんじゃなかったの?」
わたしがそう訊くと、一閃くんは申し訳なさそうに「火鷹さんには助けていただきました。でも、ここまで俺を運んですぐに、灰原を追って行ってしまって······」と言った。
「灰原?もしかして、うちの社内に盗聴器を仕掛けた?」
わたしがそう言うと、わたしの隣に立った大樹さんは「一閃を撃ったのは灰原だ。火鷹は一閃の代わりに灰原を追ったんだろ。」と言い、ズボンのポケットに手を突っ込んだ。
(そっか···、だから大樹さんは、一閃くんを裏口まで迎えに来てくれたんだ。火鷹が灰原を追ったのを知っていたから···)
「射生さん。あと、一閃のこと頼んでいいですか?」
大樹さんは低い声でそう言い、わたしが「任せてください。」と返事をすると、「じゃあ、俺は仕事に戻ります。」と言って監視室へ戻って行った。