君となら地獄を見たい

(あの灰原って男···、変装が得意なだけかと思っていたけど、スナイパーの腕まで立つなんて。しかも、うちの一閃くんを撃ち抜くとは···、やっぱり"ブラック·ガルヴァス"は侮れない。)

わたしはそんな事を考えながら、一閃くんの傷の止血具合を確認した。

「うん、止血剤効いてるみたい。結構出血しちゃったから、鉄分摂らなきゃね〜。」

わたしがそう言って微笑むと、一閃くんは「たくさんレバー食べなきゃ!」と言い、ふざけて笑おうとしていたが、やはり傷が痛むようで「イテテテッ···」と顔をしかめていた。

「まだ無理しちゃダメだよ?あとでスープ作ってくるね。」
「ありがとうございます。···射生さんは、やっぱり優しいなぁ。」
「えっ?普通でしょ?」
「それを優しさだと思わずに普通に出来るのが、本当に優しい人なんですよ。」
「一閃くん、どうしちゃったの?褒めても何にも出ないよ?」

わたしはそう言い「ふふっ。」と笑うと、一閃くんは「褒めてるつもりはなくて、本当にそう思ったんです。火鷹さんが惚れるの、分かるなぁ〜。」と独り言を呟くように言った。

「何言ってんのよ。」
「ははっ!こんなの火鷹さんに聞かれたら、しばかれちゃう!今の火鷹さんには、秘密にしてくださいね!」

そんな事を話し、さっきまでの緊迫した雰囲気が和んでいく。

わたしは一閃くんを医務室で休ませている間、リビングまで上がりキッチンに立つと、ほうれん草や小松菜、あさりなどを使った鉄分が摂れるスープを作った。

(こんなもんでいいかな?)

スープの味見をし、一閃くんのところへ運ぼうとした、その時だった。

ミクロマイクから、ボスの声が聞こえてきた。

『なっちゃん!』

只事ではない様子のボスの声に、わたしはハッとする。

わたしはすぐに「はい、聞こえてます!」と応答した。

『一閃の状態は?』
「灰原に撃たれて胸を貫通していましたが、急所は避けていた為、命に別状はありません。」
『そうか、それなら良かった。その灰原だが、火鷹が無事に摘み終わったよ。』

それを聞き、安心するわたし。
しかし、ボスの言葉には続きがあった。

『ただ、火鷹も怪我をしてる。』
「えっ?!」
『今そっちに連れて帰るから、帰ったら手当てを頼めるかな?』

(火鷹が怪我?!)

わたしはボスの言葉に焦り、「火鷹は大丈夫なんですか?!」とつい少し言葉に力を込めてしまった。

『心配しなくて大丈夫だよ。とりあえず、すぐ帰るね。』

心配するわたしを宥めるようにそう言うボス。
わたしは何とか自分を落ち着かせながら、「わかりました。」と返事をし、ボスと火鷹の帰りを待った。
< 23 / 60 >

この作品をシェア

pagetop