君となら地獄を見たい
そしてわたしは、医務室に居る一閃くんにスープを届けたあと、リビングでボスと火鷹の帰りを待った。
ボスと火鷹が帰って来たのは、連絡があって30分もしない内だったが、わたしにとっては途轍も無く長い時間に感じた。
「ただいまぁ!」
そう言って明るく戻って来たボスの横には、何だか居心地が悪そうな表情を浮かべる火鷹の姿があった。
「おかえりなさい。」
わたしはそう言って、ボスと火鷹に駆け寄る。
そして、わたしは火鷹の身体の具合を見るように目を凝らすと、火鷹の腹部に微かに血痕がついている事に気付いた。
「火鷹、怪我は?」
「大した事ねーよ。」
火鷹はそう言ったが、ボスは火鷹の肩をバンッと強く叩き、「かっこつけてねーで、なっちゃんに手当てしてもらって来い!」と言った。
「じゃあ、俺は大樹のとこ行って来るから。なっちゃん、火鷹のことよろしくね!」
「はい。」
ボスは手をヒラヒラと振ると、エレベーターに乗り、監視室の大樹さんの元へ向かって行った。
リビングに残された火鷹とわたしは、何だかぎこちない雰囲気で顔を見合わせる。
「医務室は一閃くんが休んでるから、火鷹の部屋でもいい?」
わたしがそう訊くと、火鷹は「あぁ。」と返事をし、わたしは火鷹の部屋で手当てをする事にした。
火鷹の部屋に入ると、火鷹は着ていた上着とTシャツを脱ぎ、上半身裸の状態になった。
火鷹の左腹部には少しの出血があり、大きな傷ではない事にわたしは安心した。
「ほら、座って。消毒して薬塗るから。」
「そんな手当てが必要な程の怪我じゃねーのに。ボスが大袈裟に言うから。」
「どんな傷でも甘くみちゃダメだよ。いいから、ほらっ!」
わたしの言葉に火鷹は仕方なくベッドに腰を下ろした。
そしてわたしは火鷹の隣に座り、消毒をしてから傷薬を塗り、腹部に包帯を巻いていく。
すると火鷹は「包帯だなんて大袈裟だな。」と言い出した。
「ガーゼに防水パット貼る方が良かったかな?」
わたしがそう訊くと、火鷹は突然わたしに顔を寄せてきて「キスでもいいけど?」と言ったのだ。
「は、はあ?!何言ってんの?!」
「何だよ、そんなに嫌がらなくてもいいだろ。」
「べ、別に嫌がってるとかじゃなくて!そ、そのぉ···火鷹らしくない、から。」
自分でも赤面していると自覚できる程、顔が火照っているのが分かる。
そう言う火鷹本人も微かに頬を紅く染めており、わたしたちは恥ずかしくてお互いの顔を見る事が出来なかった。