君となら地獄を見たい

「俺···、自分の気持ちに、素直になる事にしたんだ。」

静かにそう話し出す火鷹は、今までに見た事のないような少年のような表情をしていた。

「さっき一閃が撃たれて、灰原に腹が立って奴を追い掛けた時、もう死ぬ覚悟で追ったんだ。意外と手強い奴だったから。でもさ···、灰原は"ブラック·ガルヴァス"のトップ3にも入らないような男だ。そんな男に負けたら、俺カッコ悪すぎだろって思って。」

火鷹はそう言ったあと視線を上げ、わたしを見ると「夏菜を守るって、言ったくせにさ。」と恥ずかしそうに言った。

「灰原に銃口を向けられた時、夏菜の顔が思い浮かんだんだ。こんなとこで死んでられない。夏菜のところに、帰らなきゃって。そしたら、いつの間にか、灰原は目の前で倒れてた。」

夏菜の顔が思い浮かんだ――――

そんな大変な時にわたしの事を思い出してくれたんだ。
そう思うと、わたしの心が今まで感じた事のない音を立てた。

「俺は、夏菜を守る為にまだ死ねない。」

火鷹はそう言うと、自分の言葉を笑い飛ばすように「俺、今めっちゃハズい事言ってんな!」と笑い出した。

しかし、わたしは一緒になって笑う事はせず、そんな火鷹に「ありがとう。」と心からの言葉を伝えた。

「嬉しい···、火鷹の気持ちが嬉しい。」
「···夏菜。」
「わたし、今までこんな気持ちになった事ないから、上手く言えないけど···、これって···、わたしも火鷹の事···、好きって、事なのかなぁ······」

自分の気持ちを探り、言葉を選びながらわたしはそう言った。

すると火鷹は、わたしの口から出てきた言葉が予想外だったらしく、驚きのあまり言葉を失っていた。

「え、わたし···、変な事言っちゃった?!」

火鷹の反応に不安になったわたしがそう訊くと、火鷹は何も言わずに首を横に振り、そして「じゃあ···、キスしていい?」と言って、わたしの顔を覗き込むように顔を寄せてきた。

「嫌なら、嫌って言ってくれていい。」
「···キスしたら、火鷹の傷、治るかな?」

わたしがゆっくりとした口調でそう訊くと、火鷹は優しく微笑み「治るよ。」と囁くと、わたしの頬に手を添え、そっと唇を重ねた。
< 25 / 60 >

この作品をシェア

pagetop