君となら地獄を見たい


火鷹とお互いの気持ちを確かめ合い、初めてキスをしたあのあと···――――
正直、あの後の事は覚えていない。

ただ、その先の事はしていないのは確かで······、でも火鷹とのキスの余韻がわたしの唇には、まだ残っていた。

「なーっちゃん!どうしたぁ?ぼんやりして。」

そう言って、わたしの顔を覗き込んできたボス。

わたしはボスの声に「えっ、」と我に返り、「あっ、申し訳ありません。仕事中なのに、ぼんやりしてしまうだなんて······」と言いながら、掛けている眼鏡をかけ直した。

「昨日さぁ···、どうだった?」

そう言いながら、ニヤニヤしてわたしのデスクの端に腰を掛けてくるボスは、どこかワクワクしているように見えた。

「どうって、何がですか?」
「だからぁー、火鷹とだよ!二人きりにしてあげたじゃん?」
「ちょっ、ちょっとボス···、何を目的にそんなことを?!」
「そんなの決まってんじゃん。男と女がする事なんて、一つしかないだろ?」

ボスの言葉で昨日の記憶が蘇ってくる。

わたしはあまりの恥ずかしさに「ボス!何て事言ってるんですか!」とボスを責めた。

「えぇー、もしかして何もしなかったの?ダメだなぁ、火鷹は······、あいつも"漢"を見せる時だって分からんのかねぇ。」

ボスはそう言いながら腕を組み、頭を悩ませるような表情を浮かべた。

(言えるわけがない···、ボスに言えるわけが······、火鷹と、キスしたなんて······)

「まぁ、そこんとこは俺から火鷹に教育しとくから。ごめんな!なっちゃん!」
「別にボスに謝られても···、というか教育って何ですか。」
「まぁまぁ、男にもさ、色々あるんだよ!心の準備と、ここぞという時が!」

そう熱弁するボスであるが、なぜか全く良い事を言っているとは思えず、「あぁ、はあ······」と反応に困るわたし。

するとボスは、デスクから降りると、おちゃらけた雰囲気から一気にオーラを切り替えてきた。

「でっ···実はさ、今朝、綱海から連絡が入って、"ブラック·ガルヴァス"の本拠地を特定出来たって。」
「えっ、本当ですか?」
「うん。今日中には、侵入ルートの確保が出来るだろうって。」
「···という事は、」

わたしが静かにそう言うと、ボスは頷き「いよいよだね。最後のミッションだよ。」と言い、どこか寂しそうに微笑んで見せた。
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