君となら地獄を見たい
定時を迎え、社員たちが帰宅したあとの静まり返る社内。
そしてわたしは20時少し前にボスの自室を訪ねた。
ボスの自室のドアをノックすると、「はーい。」と言う軽いボスの返事と共にボスの部屋の扉が開いた。
「いらっしゃい。早いね。」
そう言って、開いた扉の隙間から顔を覗かせるボスは、白いTシャツ姿にサラサラの長い髪の毛を後ろで束ねていた。
「ちょっと早く来すぎちゃいましたかね。」
「いや、大丈夫だよ。どうぞ。」
「失礼します。」
そう言い、ボスの部屋に足を踏み入れたわたし。
よく考えてみれば、わたしはボスの部屋に入るのが初めてだ。
そこでわたしは、ある事に驚いた。
「えっ···、ここボスの部屋ですよね?」
「うん、そうだよ?なんで?」
「なんでって···、えっ?」
そこに広がるボスの部屋···、いや、狭過ぎるボスの部屋にわたしは驚いた。
メンバーの部屋はそれぞれの役割に応じて広さが違う事は知っていた。
例えばだが、わたしは自室で薬の調合なども行う為、たくさんの薬剤や機械を置くスペースが必要なこともあり、他のメンバーよりも広い部屋を与えてもらっているのだ。
しかし、ボスの部屋はあまりにも狭く、その上、殺風景だった。
ベッドに2人掛けソファーしか置かれていないボスの部屋は、まるで安アパートに住む独身男性の部屋のようだった。
「ボス···、ずっとこの部屋を使ってたんですか?」
「そうだよ?」
「"ボス"なんですから、もっと広くて綺麗な部屋にすればいいのに······」
「ただ寝に帰って来るだけなんだから、そんなスペース必要ないだろ?それに広過ぎると落ち着かないんだよ。」
そう言って、あっけらかんとするボスは、偉そうにするでもなく"ボス"らしくない、うちのボスらしい発言だと思った。
すると、ボスの部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。
「おっ、来たか。」
「えっ?」
ボスは扉横にあるセンサーに手をかざすと、ロックを解除し、扉を開けた。
その扉の向こうに立っていたのは、まさかの火鷹だったのだ。