君となら地獄を見たい
母は、そのネックレスをボスに託した一週間後、危篤状態になり、わたしはその際に帝王切開で産まれてきたようだ。
それからわたしが産まれて2日後、母は息を引き取り、わたしは施設へと引き取られた。
ボスは「本当は、俺が引き取って育てたかった。」と話してくれたが、当時はまだまだ組織の中で下っ端だったボスが、裏社会で任務を遂行しながら赤子を育てる事は難しく、仕方なくわたしを施設へ預けたと話してくれた。
しかし、母から預かっているわたしへのネックレスがあった為、いつかそれをわたしに渡せる日がくるように自分がトップの地位まで上り詰める努力を必死にしてきてくれたようだった。
そして、やっと自分が"ボス"と呼ばれる立場になった時には、わたしは既に施設を出ており、ネックレスを渡しに行こうと陰からわたしの生活を覗った。
その時のわたしは、あまりにも酷い姿で、悲惨な生活状況だった為、ボスはかなりショックを受けたと言っていた。
「本当は、ネックレスを渡すだけで、それ以上関わろうとは思っていなかった。俺と関わる事で危ない目に遭わせたくなかったからね。でも···、なっちゃんに声を掛けたあの日、このまま放っておけないと思った。その時、俺は俺で息子が居たから···、子を持つ立場になって、宝珠の気持ちを思ったら、自分の傍で見守りたいと思ってしまったんだよ。」
そう言って、わたしに切なく微笑みかけたボスは、ふと火鷹の方を見た。
「火鷹···、お前にも申し訳ないと思ってる。母さんの顔も覚えてないだろ?」
ボスがそう訊くと、火鷹は表情一つ変えずに「別に···俺には、親父がいるから。」と言った。
すると、まさか火鷹からそのような言葉が出てくると思っていなかったボスは、一瞬驚いた表情を浮かべたが、微かに瞳を潤ませ、「何だよ!俺を泣かせにきてやがるな!」と涙を誤魔化すかのようにふざけた様子で火鷹の肩を小突いていた。
火鷹のお母さんが居ない理由は、わたしには分からない。
亡くなっているのか、それとも何処かで生きているのかも知らないが、ボスと火鷹にも色んな事があって、二人で乗り越えてきたのだろうと思った。