君となら地獄を見たい
「それ、どういう事だよ!」
納得いかない様子で先にそう言ったのは火鷹だった。
「まぁ、まず俺の話を聞いてくれ。」
落ち着いた口調でボスがそう言うと、火鷹は言葉を飲み込み、ボスの話の続きを聞く体勢に戻った。
「"ブラック·ガルヴァス"に残っているのは、あとは3名のみとなった。トップのボスの側近である、ガンナーの"イタチ"、武闘派の"マカベ"、それから俺たちにとってのラスボス···"トバリ"だ。」
ガンナーの"イタチ"は、いつも真っ黒なロングコートに身を包んでいる30代前半くらいの男。
武闘派の"マカベ"は、黒人並みの体格に片目に眼帯をしたスキンヘッドの男だ。
わたしはこの二人の姿を見た事はあるが、"ブラック·ガルヴァス"のボスである"トバリ"に関しては見た事もなければ、容姿の情報もなく、性別さえ知らない。
「俺の推測では、まずイタチがうちの本部に侵入して来ると思う。そして、真っ先に狙われるのは大樹だ。そこを詠んで、大樹の近くには堕璃と一閃を配置する。」
ボスの考えを聞き、わたしは本部に侵入される可能性があるのであれば、大樹さんを別の場所に避難させた方が良いのでは、と思ったのだが、よく考えてみれば大樹さんが本部から離れるわけがないのはわたしにでも分かった。
大樹さんは、ほぼ外部に出た事はなく、ほとんどの時間を監視室で過ごして来た。
あの監視室は大樹さんにとってみれば"自分自身"に等しいのだ。
ボスはそれを理解した上でその作戦にしたのだろう。
「そこで必ず、堕璃と一閃には、イタチを摘んでもらう。でも、もし···堕璃と一閃さえ太刀打ち出来ないようであれば···、火鷹、お前に任せる。」
ボスの言葉から、火鷹とわたしは"切り札"として本部で待機する事になると理解できた。
火鷹はボスの指示に「了解。」と短い返事をした。
「そして、俺は綱海と一緒に敵地に向かう。堕璃と一閃が任務に成功すれば、その後に俺と綱海と合流してもらうつもりだ。敵地に潜入すれば、あとはマカベとトバリのみとなる。」
ボスは静かにそう言った後、火鷹とわたしを見て、微かに口角を上げた。
「本来であれば、俺が奴らにトドメを差したいところだが···、そう簡単ではない相手だ。でも、致命傷を与えるまでは俺は死ねない。」
ボスはそう話すと、それから「火鷹、射生。」とわたしたちの名を呼んだ。
ボスにコードネームで呼ばれるのは、いつぶりだろうか。
「俺がGOサインを出したら、最後は頼む。それが俺から二人への"最後のお願い"だ。いや、命令だな。」
ボスが言う"最後のお願い"···――――
わたしはその意味をすぐに理解した。
それは、火鷹も同じだろう。
火鷹とわたしは偶然にも同じタイミングで「了解。」と口を揃えて返事をした。