君となら地獄を見たい
ボスの部屋にあるベッド下の扉から監視室へ向かうと、そこには血だらけになり床に倒れる一閃くんと、一閃くんの胸あたりを上から手で強く圧迫する堕璃さんの姿があった。
「一閃くん!!!」
わたしが駆け寄ると、一閃くんは力無く「射、生さん···っ、へへっ···」と言い、無理に笑って見せた。
一閃くんは鎖骨あたりと胸を撃たれており、出血が酷く、床にまで血の海が広がっている状態だった。
「わたしを庇って撃たれたの。」
そう言う堕璃さんは、悔しそうだった。
「だって···俺が、守るって、約束した、じゃ、ないですか······」
「そうだったわね。あんた、チビのくせにカッコよかったわよ。」
「チビ、は、余計、ですけど、ねっ····」
そう言ったあと、一閃くんは吐血をした。
きっと片側の肺を撃ち抜かれて、血が溜まっているのだろう。
微かに肺からゴロゴロと音がする。
「あとはわたしに任せて、堕璃さんはボスたちのところへ行ってください。」
わたしがそう言うと、堕璃さんは頷き、立ち上がると急いで監視室から出ようとしたが、その前に足を止め、いつも大樹さんが座っていた椅子に近付くと「こっちこそ、ありがとうよ。」と呟いてから再び走り出し、ボスと綱海さんの元へ向かった。
大樹さんが座っていた椅子の背もたれからは、大樹さんの頭が見えていた。
しかし大樹さんはピクリとも動かずに座ったままだ。
「一閃くん、今止血するから、これ以上喋らないでね?」
わたしがそう言うと、寿砂はわたしの代わりに一閃くんの出血箇所を圧迫してくれた。
そして腰に下げているポシェットから薬を出そうとした時、一閃くんはそのわたしの手を掴んで止めた。
「···ダメです。っそ、れは···俺に、使うのは、···っ勿体な···っゲホゲホッ」
「だから、喋っちゃダメ!何言ってるの?!喋ると出血が!」
わたしはそう言ったが、一閃くんはゆっくりと首を横に振った。
それから「ボス······、俺、役に、···っ立ち、ましたか······?」と今にも途切れそうな声で言ったあと、瞳に光がなくなり、わたしの手を掴んだその手は、パタッと床に落ちてしまった。
『一閃···、お前は充分やり遂げたぞ。』
一閃くんの最期の言葉にボスはそう返した。
その声が一閃くんの耳に届いたかどうかは、分からない。