贄と呼ばれた少女の、幸せ

 少女が次につれてこられたのは、井戸のある裏庭だった。そこで少女はすべての衣服をはぎ取られ、水を張ったたらいに放り込まれる。少女は、やっぱり汚いと水をかけられるのだと思い、大人しくそれを受け入れた。

「嫌だわ、本当に汚い!」

「領主様、どうしてこんな汚い子供をつれてきたのかしら……」

「シッ! 余計な詮索なんてしない方がいいわ」

「ねえ、この髪どうする? 鳥の巣よりひどい」

(ほぐ)すのは無理ね、切るしかないわ」

「やだ!! ねえ頭に虫が湧いてるんじゃない? 何か動いた!」

「一度ぜんぶ剃り落としましょう。剃刀と駆除薬を持ってくるわ」

 女たちはきゃあきゃあと騒ぎながら、少女の髪を剃り粗い布で全身に泡を擦りつける。強く擦られ、少女の柔い肌は赤らみヒリヒリと痛んだが、少女にとっては痛いことが当たり前の日常だ。後で治せるといいなと思いながら、ただじっと現れては消えていく泡を見つめていた。

< 10 / 60 >

この作品をシェア

pagetop