贄と呼ばれた少女の、幸せ
洗い終わると、女たちは少女に穴の開いた袋のようなものを着せつける。また歩かされ、少女は小ぢんまりとした部屋に通された。寝台と机と椅子、おまるが置かれているだけの狭い部屋だが、少女にとっては信じられないほど贅沢なもので、とうてい自分に与えられたのだとは思えなかった。
(ニエは買われたから、きっとここにあるものといっしょなんだ)
少女は自身を、家具のようなものなのだと考えた。部屋を与えられたのではなく、ここに置かれたのだと。
(それならニエは、ここでじっとしていよう)
自分は『ニエ』、それから自分をこの屋敷につれてきた男が『りょうしゅさま』──少女は呼び名を忘れないように、と頭の中で繰り返しながら部屋を眺める。
『ニエ』が何を意味するのかはわからなかったが、あの暖かな光が必要だから買われたのだと少女は理解している。だから、いつかあの光が必要になって、誰かの『痛い』を治すのだ。
それはとてもよいことだと、少女は少しうれしくなった。