贄と呼ばれた少女の、幸せ
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「なんで私がこんなことしなきゃいけないのよ!」
ここにつれてこられてから、ひと月ほどが経った。少女はその間ずっと、与えられた部屋でただじっと座っていた。
朝と夜に食事が与えられる。昼には部屋が清められ、夕食後はお湯の入った桶が運び込まれて体を拭かれた。貫頭衣のような服は毎日取り替えられ、脱いだものはどこかへ運ばれていく。少女はそのすべてを、家具と同じように自分も手入れされるのだと思い黙って受け入れていた。
「気味が悪いのよ! 何なのよ、自分のことくらい自分でやりなさいよ!!」
清掃をしていた女が甲高い声で叫ぶ。それはオマエによく似た、覚えのある様子だった。ああ、次は殴られるのだ、と少女は思ったが、女はただ手に持っていた濡れ雑巾を少女に投げつけ、走り去っていった。